*吉田倫幸
生命工学工業技術研究所 人間情報部 生理情報研究室長
1.はじめに
感性や快適性が注目されはじめたのは、1980年代半ばからである。消費者は、商品に対して機能などの必須条件よりも個性的な魅力条件を重要視した。その背景には、度を超えた機能の充実よりも、遊びを含めた精神の充足を求める消費者の無自覚的欲求があったからと推察される。時代はバブル期であり、消費者ニーズに合わせて、機能以外に付加価値をつければ、商品価値が上がり、モノが売れた時代であった。その付加価値キーワードが感性であり、快適性であったと言える。しかし、当時の学問の世界では、わずかの先見的な研究者をのぞき、「感性」や「快適性」を重要な研究対象とはみていなかった。
結局、見せかけの感性商品はバブルが崩壊すると共に消滅してしまい、景気低迷とともに「感性」や「快適性」というキーワードも消えたかにみえたが、人間に優しいモノづくりの必要性は、なくなったわけではなかった。高齢化を迎え、益々重要性は増している。タイムラグはあったが、「感性」が学問の対象となったことは、避けて通れない時代のながれであったと言える。
ここに産声をあげた感性工学会は、新しい世紀にとって、人間とモノとの関わりを「感性」をキーワードに研究し、よりよい関係を作り出す牽引車となっていくことが求められる。日本語で表現される「感性」概念は幅広く、漠然とした側面をもっている。しかも客観的に定量化する方法論は
ほとんどない状態である。感性計測部会は、「感性」を定義し、計測方法論を確立し、その定量化を通じて感性工学に寄与したいと考えている。
2.部会の趣旨
今や、デジタル技術、情報化技術の進展は、第2の産業革命を推進している。これは生活の利便向上に寄与してきたが、一方で恩恵を受ける側の人間特性(生理・心理・行動等)を定量的に把握する技術が十分整備されていないために、様々な場面で製品との不適合に伴うトラブルやエラーが生じている。
我々は、「モノにヒトを合わせるのではなく、
ヒトにモノを合わせる」、すなわち、人間の特性基準に合った製品・環境つくりを推進する立場か ら、生活者の人間特性を現場で評価することが求められる。感性工学は、まさにこれを推進するものであり、非常に重要な学問である。
しかし、「感性」の意味する内容が定義されなければ先に進まない。これは、部会だけでなく、学会全体の問題でもある。また、かりに操作的に定義されたとしても、定性的でなく、定量的に計測評価できなければ意味はない。さらに、多くの学問研究で見られるように、実験室でパラメータを制御して、いかに実験データをだしても、それだけでは生きたものにはならない。そこで、本部会では、生活者が生活する場を本舞台として、「感性」をとらえ、計測し、定量的に評価する手法を確立することを中心に活動を進める。生理学的手法、心理学的手法、行動学的手法、様々な方法が考えられるが、それらを有機的に統合した方法論を新たに生み出す。
3。運営のしかた
「感性」は新しい研究領域であり、だれも同じスタート地点にたっている。したがって、まずは制約のない自由な雰囲気の中で議論したい。これは、継続して部会の精神とする。
具体的にどのような部会活動をしていくかは、会合の中でつめることになると思うが、できるだけ、月に1回程度は部会を開催したい。また、議論し、情報交換するだけでなく、実際に協同して計測やデータの収集もできるようなアクティブに活動する部隊となることが望ましい。現場で使えるような計測装置も共同でつくりたい。そういう意味で、大学・企業を問わず、多くの専門分野から、若くてエネルギーのある研究者が多数この部会に参加してくれることを望む。
*現在の所属/問い合わせ
〒724-0695 広島県賀茂郡黒瀬町学園台555-36
広島国際大学人間環境学部感性情報学科 教授
TEL 0823-70-4883
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E−Mail : y-tomoyu@he.hirokoku-u.ac.jp