感性工学と新製品開発部会

長町三生

*国立呉工業高等専門学校長

1.はじめに

30年前に感性工学〔以前は情緒工学と呼んでいた〕の研究を開始したときには学会ができるとは想像もしなかった。当分の間学生達とコツコツ研究を進めているうちに幾つかの企業から感性工学による製品開発の仕事がはいってきたので、いろいろな手法の開発も手がけるようになり、今日のように20−30の製品の開発までこぎつけられた。

感性工学商品はさすがに我が国がもっとも多いが、となりの韓国も感性工学に強い関心を持ち、韓国科学技術庁が100億円の予算で韓国企業と大学との共同研究を支援している。われわれもそれの協力をふくめ、2回の日韓感性工学国際シンポジウムを開催したところである。アメリカでもフォードやGMなどの大企業が感性工学導入に関心をもち、GMでは“Kansei Engineering Laboratory“の看板を掲げた研究室があるほどである。

 6月にはミシガン大学で感性工学のWorkshopの依頼を受けている。ほかにもイギリス、オランダ、ドイツなども強い関心を持っており、研究者の日本への派遣を考慮中である。日本ばかりでなく諸外国からも熱い眼差しを受けているところへこのような学会活動が始まることは喜ばしいことである。

2.部会活動のねらい

 「感性工学と新製品開発」部会は森典彦教授(東京工芸大学)と長沢伸也教授(立命館大学)の3人の共同運営で執り行う。部会会員のなかから数名の幹事を選出していただき、その人たちとともに事業計画を立てて、部会会員の希望を取り入れた部会活動を進めたい。つまり部会会員のための活動であり、部会会員に利点のある活動をするのが、ねらいの一つである。

 部会活動の二つ目のねらいは、本部会は感性工学の考え方を応用して新製品開発を生み出すことである。もともと感性工学は実用学問であり製品開発をサポートするための科学である。実用学問とは、モノづくりを進めながら必要な手法を考えたり新しい発想をしたりすることであり、部会会員の発想をその都度取り入れながら、手法の開発・製品の開発を進めたいと考えている。いわゆる「全員参加型」の部会活動をめざしている。感性工学についての部会会員に知識にバラツキがあると予想されるので、感性工学の基礎から応用技術までの学習会も実施したいと考えている。

3.具体的な部会活動

  1. 勉強会
初期の段階では勉強会が中心になるかもしれない。
  1. 感性の把握方法(調査法)
  2. 調査結果の分析と解釈の仕方
  3. 企業戦略との整合性の取り方
  4. 新製品コンセプトの作り方・展開方法
  5. 該当製品分野の感性ワードの収集
  6. 該当製品分野のデザイン(設計)要素の分析
  7. 感性工学実験の進め方・データの取り方
  8. データの分析法と結果の解釈
  9. データからデザイン要素への写しかえ
  10. 製品のレビュー
  1. システム構成法
  1. データベース構築法
  2. システム設計法
  3. ハイブリッド感性工学設計法
  4. 画像認識システム
  5. 広島大学データベースの公開
  1. 事例研究
  1. 先進企業の感性工学の利用の仕方
  2. 感性工学製品の事例研究
  1. 新製品開発研究

  2. 部会会員の中から希望社の製品の新しい製品開発を試行する。

  3. 海外の感性工学にかかわる企業との交流
4.これまでに開発した手法
  1. Category Classification

  2. これは最初に決定した“製品コンセプト”の概念をサブコンセプトにブレイクダウンするうちに物理量に変換して設計に移し替える手法である。

  3. Kansei Engineering System

  4. 感性工学にコンピュータを導入することで効率良く製品設計をする手法である。知識工学やニューラルネットワーク技術などが利用できる。

  5. Hybrid Kansei Engineering System

  6. 感性からデザインへの流れをForward Kansei Engineering、その逆の流れをBackward Kansei Engineeringという。これら2つを結合してデザイナーの仕事をやりやすくしたものをHybrid Kansei Engineeringという。

  7. Mathematical Kansei Model

  8. 感性から設計までの流れの数学モデルを構築することで、よりよいシステムを組むことができる。これまでにファジイ積分・測度モデルによって望ましいシステムができた。

  9. Virtual Kansei Engineering

  10. Virtual Reality技術と感性工学とを結合させることで、生活者の感性を表現し、かつ疑似体験によって本人が確認するシステムが構築され利用されている。これまでにキッチンシステムと住宅全体の設計システムとが実用化されている。

  11. Collaborative Kansei Designing
遠隔地にはなれたデザイナーたちが同一データベースを活用し協調して発想することでより一層の創造的製品開発ができる仕組みである。サーバーに多くのデータベースが取り込んであり、3次元ソフトを利用しながら、知的インターネットを活用して、画像を相手に送り会話をしながら同時開発を実行する仕組みである。

参考文献

  1. 長町三生:感性工学、海文堂出版、1989
  2. 長町三生編:快適科学、海文堂出版、1992
  3. 長町三生編:感性商品学、海文堂出版、1993
  4. 長町三生:感性工学のおはなし、日本規格協会、1995
  5. 李舜尭・長町三生:情報化時代の感性人間工学、養英閣、1996
  6. 辻三郎編:感性の科学、サイエンス社、1997
  7. M.Nagamachi(Ed.),KanseiEngineeringT,Kaibundou Publishing,1997
  8. S.Y.Lee(Ed.),Kansei Engineering U,人間経営者、1999
  9. 森 典彦:デザインの工学、朝倉書店、1991
  10. 森 典彦編:左脳デザイニング、海文堂出版、

  11. 1993

  12. 長沢伸也:おはなしマーケティング、日本規
   格協会、1998

*現在の所属
勤務先:廣島国際大学人間環境学部長
所在地:724−0695広島県賀茂郡黒瀬町学園台555−36
電話:0823−70−4849/4881
ファックス:0823−70−4852
E-mail: m-nagama@he.hirokoku-u.ac.jp