加藤俊一
中央大学理工学部経営システム工学科 教授
電子技術総合研究所知能システム部ヒューマンメディアラボ リーダー
1.はじめに
感性情報処理技術の進展により、感性の工学的モデル化の研究が進んできた。感覚器でのセンシングから心理的認知的現象としてのイメージまでの過程が、主として視聴覚を突破口として工学的に実現されつつある。人工知能でのエキスパートシステムや、パターン認識技術による感覚代行の技術と対比させて言えば、感性のモデル化とこれを用いた感性過程のシミュレーション(人工感性;マルチメディアデータベースの感性検索など)、感性情報処理技術を用いた感性的な作業の支援(強化感性;視認性の改善、感性モデルの可視化など)が現実の技術となってきた。
感性工学には、情報科学・情報処理技術、人間工学、心理学・認知科学、デザイン工学、マーケティング、生産工学などの視点からの学際的アプローチが必要である。日本感性工学会もそのような「場」を提供する役割が期待されていよう。
このような学際的アプローチを「お題目」だけにしないためには、様々なアプローチの研究者・技術者・利用者が、自らのアイデアを試作し、要求を具体的に提示し、様々な視点から相互に利用・検討して、アイデア・技術を積み重ねていくための共通のプラットホームを提供することが重要である。
2.感性工房プラットホーム
共通のプラットホームが果たすべき役割は、
感性工房部会では、通産省工業技術院のヒューマンメディアプロジェクトで電子技術総合研究所
図1 感性工房プラットホームの利用イメージ
などのグループが開発している「感性工房(工業デザイン支援システム)」をこのようなプラットホームの叩台として利用しながら、感性工学の研究者、技術者、企業、工業デザイナー、さらには、消費者が、自らのアイデア・要求を具体的に提示し、共に「切磋琢磨」する場を提供する。
このような利用・検討・評価を通じて、感性工学のアイデア・技術を積み重ねていくと同時に、より高度なプラットホーム作りを進める。
3.感性工房プラットホームの特徴
感性工房プラットホームは、現在、以下のような機能が整備されつつあり、また、新たな機能や新たなコンテンツを容易に追加拡張可能なソフトウェア構成で作成されている。
工業デザインの対象・素材として必要な種々のマルチメディアコンテンツに対する感性のモデル化手法を用意した。図形、アイコン、イラスト、絵画、風景・景観写真、3次元物体などを対象に、対象-対象間、対象-言葉間、言葉-言葉間の主観的類似度を統計的に分析・学習し、データベースの例示・類似・感性検索に利用できる。
明暗や色調のコントラストの悪い画像に対して、自動的&画質に適応的に、コントラストを同時に改善してデータベースに格納できる。また、各画像を、個々の利用者の好みに合うような明暗や色調に適応的に加工して質感を高めて表示できる。
構成の違う複数のデータベースサーバーを、単一のインタフェースから統合的に利用するためのインタフェースエージェント機構を試作した。また、利用者の操作から感性情報を自動的に抽出・収集して、動的に感性モデルを構築する。
(e) 多次元インタフェースサブシステム
感性データベースシステム上でデザイン支援のための、3次元的な検索GUIを提供する。また、各利用者の使い勝手に適合した、インタフェースのカスタマイズも可能である。
(f) 感性データベース管理サブシステム
時間と共に変化する感性情報とマルチメディア情報を対象とした感性データベースシステムの概念モデル、および、概念モデルから論理モデルへの変換ツールを提供する。
図2 感性工房のシステム構成
4.感性工房部会の進め方
電子技術総合研究所が公開する感性工房プラットホームを利用する。利用形態としては、電子技術総合研究所内に設置されたヒューマンメディアルームに実際に入っての利用、インターネット経由で、手許のマルチメディア情報端末からの利用の双方が可能である。
情報処理からの研究者・技術者は、新しい手法・アルゴリズムをプラットホームに組込んで、公開テストを行う。多数の利用者からの評価実験などを実施できるようにする。
工業デザイナーは、新しい手法・アルゴリズムをモニタ利用して評価すると共に、これら手法・アルゴリズムへのニーズを明確にする。実際に、デザインワークに感性工房プラットホームを利用し、良い作品・デザインの創出を試みる(例えば、デザインコンペでの優勝を狙う、など)。
また、消費者参加型マーケティング、工業デザイン、製品設計のパスを感性工房プラットホーム上で試作し、消費者とデザイン・製品設計・製造を結ぶ、新しいパスを考える。
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