ヒューマニクス研究部会

*太田健一

姫路工業大学工学部情報工学科 助教授

1. はじめに

  ヒューマニクス(humanics)とは、ヒューマン(human:人間)とテクニクス(technics:技術・学術)を融合させてできたことばです。これは、人間の幸福・快を客観科学的に解明し、それを促進する技術を研究開発する学術領域を意味しています。そこでは、様々な研究分野が「感性」を共通項として有機的に連動し、旧来の学問境界を越えた研究協力が可能になります。

 ヒューマニクス研究部会のキーワードは、人間の高次な統合的精神機能である「感性」です。人間の感性に配慮した環境・情報やもの・ことがらを創発する人々、それらを応用して身体および感性に働きかけるサービスを提供する人々とされる側の人々、感性情報の記述や表現を探求し、感性の発現を科学する人々など多様な専門家が、それぞれの学術領域の垣根を取り払って、学際的な研究活動のできる場を作りたいと考えています。

2. 趣旨

 ヒューマニクス(humanics)は、「相互存在の科学」を目指しています。西洋科学では、観察者と対象は別々である、という観点が必要とされてきました。したがって、本学会名が"Kansei Engineering"と英訳されるように、「感性」に相当する「統合的な精神機能」を指す英語は見あたりません。しかし、人と他者、個人と世界は不可分であり、心と自然・環境との相互存在は我々の生存にとって大切なことであると考えます。

 ヒューマニクス(humanics)には、これら相互存在を映し出す多様な研究領域が含まれています。キーワードを以下に並べてみました。フランシスコ・バレーラの言葉を借りると、「遠くにある鏡に映して、新しい視点から身近なところを見ていく。そして新たな命をそこに吹き込んでいこうと思う」―――我々がヒューマニクス研究部会に集う意義でもあります。

@感性情報学(情報科学の分野における感性)

感性情報,感性コミュニケーション,主観的情報検索,通信ネットワーク,仮想現実感など

A感性環境学(環境科学の分野における感性)

衣・食・住生活環境,遊びの科学,教育工学,医療・看護学,社会システムなど

B感性人間学(哲学・心理学・美学の分野における感性)

感性モデル,感性ワード,共感覚,快,幸福,美,アフォーダンスなど

C感性知能学(知能科学・認知科学の分野における感性)

ブレインサイエンス,知能創発,人間発達科学,情動,ヒューマンインタフェースなど

たとえば、その用途として室内インテリアであるカーテンを製作すると仮定してテキスタイルデザインを考えるとしましょう。そこにはいわゆる美学的なデザインに関する感性や住生活環境学的な感性が必要です。また、使用する素材や織物としての風合いに関する繊維工学的な感性も求められます。さらに、医療現場である病室の窓に掛かるカーテンであれば、医療や看護学的な感性も不可欠です。もちろん、患者の側からみたブレインサイエンス的なアプローチや心理学的な検討も求められるでしょう。いろいろな立場や手法での研究は、ここで連動されるべきです。つまり、ヒューマニクス研究部会は、人間と技術・学術を融合させた、従来の学問領域を越えた研究者が集うことで新しい研究領域を作りたいのです。

3. 運営方針、内容あるいは特徴

 ヒューマニクス研究部会は、様々なジャンルの研究者を求めています。同じ研究領域の専門家たちが集い、より深い研究活動に没頭し、優れた研究成果をあげることはもちろん重要です。しかし、それらを有効に活用し役立つ技術とするためには、ニーズとシーズの出会いや発想の転換が不可欠です。異分野との交流が、新たな発想や可能性を醸成することは想像に難くありません。

 20世紀が終わろうとしている現在、複雑系など新しい科学の登場が、新たな知のパラダイムの構築を促しています。感性工学は、この様な新しい知の潮流の中から生まれた研究領域です。このなかでさらに新しい学術領域が誕生し成果を上げることへの期待も大きく膨らんでいます。

 キーワード「感性」に関与している研究者たちが集い、「感性」を共通テーマとするならば、異分野との交流もプロパーどうしの討論もノー・プロブレムです。ともに語り、ともに楽しみ磨きあうヒューマニクス研究部会を、ご一緒に創って行こうではありませんか。


問い合わせ/現在の所属

武庫川女子大学生活環境学部生活情報学科 太田健一
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Tel.&Fax. 0798−45−9857
E-mail:ohta@mwu.mukogawa-u.ac.jp

URL: http://wwwj3.comp.eng.himeji-tech.ac.jp/kansei