山田 瑛
理化学研究所 名誉研究員
1.感性教育の必要性について
感性は教育(Teaching)で育つものであろうか、培育(Education)によって発生するものであろうか。前者は教育学の中で感性教育が位置付けられつつあるが、感性培育の視点で論議された事はないように思われる。
ホモサピエンスは社会の中で生まれ、生育途上に大幅な余裕があり、即ち自然を観察し「美」を賞賛出来る。先ず「美=感性」として人は等しく感性を持ち得る条件にある。然しながら成人して広義の感性に大きな個人格差が現れる。優れた感性の持ち主は富める国(教育に充分投資出来る)に多く生じ、家族と親の創る環境もそれ以上に感性を持った偉大な人物を世に送り出した。
筆者は約20年前から創造性素質に興味を持ち、10年程前に下の図を創り講演に使用してきた。当初の目的は、日本の大学教育がTeachingが主でEducationの要素が少ないことの指摘であった。図を観察されて大学卒業後の創造力に欧米と日本の格差が現れるのを推察して頂きたい。不幸にして教育行政のEducation変遷へ影響を与えられなかった。
感性の形成はTeachingの内にあるものではなく、並行しているものである。親より、義務教育の先生より感性の芽生えを促し、感性を自立的に持つ機会を与えるものであろう。これらは集団の生徒へ一律に与えられない要素により、Teachingと並行すると言える。感性の形成時期は頭脳のハードウエアーの完成迄としておく。
2.本部会の在り方
感性教育研究部会は本学会の基底に有るのではないでしょうか。本来ならば工学系学会に馴染まないとお考えの諸賢がおられるでしょう。しかしアカデミック学会では横断的分野の人々の参集する経済基盤に乏しく、感性教育研究部会を以てわが国の人材育成の再基盤作りの場となれば幸いです。
本部会は付図を原点として、教育者と哲学・心理学・人類学・人間科学・芸術・社会学・行政学・工学などの方々とソフトな論談により、感性の芽生えと感性自発の機会の諸例、感性と生育環境、感性教育の方法論があるとすればその模索、などを取り纏め社会へ提言し続ける機関になれば幸いです。また他の研究部会との交流により社会・国へ貢献したいと考えます。
3.感性教育に御関心のある諸賢の本学会入会を要請致します
筆者は日本学術会議第5部材料専門研究部会で新しい工学の創成を企画中、その一つに感性工学を提唱した者です。これが鈴木邁先生の御努力で本学会の創設に至りました。筆者は教育学と感性科学の門外漢で有り、ただ図に示した感性への関心より、感性教育研究部会の提唱を致しました。
感性教育は優れた人材の育成であり、その教育成果の一部が工学・産業への貢献になります。この研究部会に所属して論談より教育の実践に役立てたい方、教育に期待する方、本部会を育てて頂ける方々の入会を切望致します。
お問い合わせ先:321-8505宇都宮市峰町350 宇都宮大学教育学部 教授 清水裕子
TEL 028-649-5370, E-mail shimizu@venice.mine.utsunomiya-u.ac.jp