感性工学会「感性脳機能部会」発足に関する趣意書


 人間のこころは環境とのインタラクションによりさまざまにゆれ動く.ここでいう環境とは人間を取り巻くあらゆる事物や事態を対象とし、自然環境のほか、人類が長い歴史の中で作り出してきた人工的産物や実社会での人間関係が産み出す複雑な心的環境をも含む.なぜなら、人間自身が自然環境の構成要素であり、人間によって創造された事物もまた自然の一部を成すと考えたからである.
 自然科学とその技術の発展は、人類に多大な恩恵をもたらした.しかし、それは反面、環境の大切さと目に見えない影響力の大きさを人間自らが真に理解し、認識するための実体験の歴史でもあった.例えば、高度成長期の急激な工業化の所産としての公害の発生は我々の記憶に新しい.また、地球規模での環境ホルモンの蔓延は生命の存続をも脅かす未解決の継続課題である.最近ではコンピュータやナノテクノロジー技術の発達によるライフスタイルの変化、そして遺伝子操作技術の農業や医学的応用による食料生産技術や医療技術の革新が、近未来の人間の生活環境を大きく変貌させようとしている.既に始まったこの変革の大きな流れの中にあって、今こそ我々はこころの本質について、これまでの自然科学的方法と人文学的方法をつないだ新しいアプローチを考えていく必要がある。この考えに基づいて得られた成果は、社会現象化しているこころの病、つまり環境変化の急激性とこころの在り方の乖離の問題や人間のこころに及ぼす特定の天然物の効果など、未知の心的生命現象に科学的論拠を与え、こころが繰り広げる多様な機能に対する具体性や論理性のある説明を可能にするだろう.
 本部会は、こころの一側面としての「感性」について、脳の高次機能を解明する立場から、脳科学・分子生物学・医学など自然科学の研究者,創造性や感受性の機構を研究対象とする感性情報学・芸術学・心身障害学分野の研究者が参画し、「感性」を産み出す脳機構の生物学的特性とその破綻のメカニズム、美術やデザインとの関わりが及ぼす脳機能への影響とその反映としての感性など分野横断的なテーマを掲げ,研究集会の運営と部会員による協同的プロジェクト活動によって,具体的な成果を生み出す.

発起人
 
久野節二 (代表:筑波大学大学院人間総合科学研究科)
山中敏正 (副代表:筑波大学大学院人間総合科学研究科)
上田秀一 (副代表:独協医科大学)
新井良八 (滋賀医科大学)
李昇姫 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
内山俊朗 (富士通株式会社ソリューションデザイン部)
五十嵐浩也 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
岩本義輝 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
大島直樹 (筑波大学芸術学系)
尾崎繁 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
大塚定徳 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
五十殿利治 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
加賀谷彰人 (秋田県立工芸短期大学)
久保光徳 (千葉大学工学部デザイン工学科)
熊谷嘉人 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
鯉淵典之 (群馬大学大学院医学系研究科教授)
榊原伸一 (獨協医科大学助教授)
佐藤弘喜 (名古屋造形芸術大学)
志賀 隆 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
設楽宗孝 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
寺内文雄 (千葉大学工学部デザイン工学科)
鳥宮直道 (京都工芸繊維大学工芸学部)
生田目美紀 (筑波技術短期大学聴覚部)
野上晴雄 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)、
松田正司 (愛媛大学医学部)
宮本信也 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
山根 茂 (産業総合科学研究所)
吉田 薫 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
山本三幸 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)

顧問:原田昭 (筑波大学大学院人間総合科学研究科)
(五十音順)